巷では「ピンポン」で名を知られてた松本大洋の最新作の第一巻。
鉄コン筋クリートの頃から大好きな漫画家です。シロとクロという二人の子供が、宝町という大人達の欲望が渦巻く都会の中で、光と闇にまみれながら生き抜いていくオハナシでした。
今回のSunnyは、星の子学園という児童養護施設を舞台にしています。親や家庭の事情によって預けられた2歳~16歳の子ども達を中心にしてオハナシは進んでいきます。子ども達は、自分たちを残して行ってしまった親を、口では恨みながらも、迎えに来てくれる日々を待ち続けています。
無邪気にも現実を突きつける子ども達のやりとり
第一話では、横浜から関西の星の子学園に、小学四年生の静という男の子が預けられるところからスタートします。預けられた事を認めれない静は、「僕こんなところすぐに出るから・・・」「家に帰るから。」と呟きます。それに対して同学年の春男は「帰れるわけないやろ。」「お前、捨てられたんやぞ。」と切り捨てます。やがて、その事実を認識した静は、園のそばに放置されている日産Sunnyという廃車の中で涙します。
この無邪気にも現実を突きつける子ども達のやりとりを軸にしながら、Sunnyのオハナシを進んでいきます。また子どもたちと、見守る園の大人たち、そして親たちとのやりとりも、もう一つの軸となっています。
子どもの心の生の声
この第一巻で一番印象的なやりとりは、園長の孫で大学生の牧男が、やんちゃな春男にせがまれて一緒の部屋で、寝る時の会話です。小学校では問題児扱いされている春男は、大好きな大人には従順で素直な一面を見せます。
春男は、年に三回しか会えない母親に会いたくないと言い出します。三回しか会えなないなら、尚更会いたいはずなのにと思うのですが、春男は「会いたいねんで・・・会いたいんやけどなぁ・・・」「会うてまうと、もう別れるときのこと考えて、もう胸のトコいっぱいになんねん。」と言い「今は会うこと考えただけで怖ぁなるんよ・・・」と呟きます。
子どもの心の生の声を聞くようで、切なくなりました。
このような子供の親への愛と葛藤が、Sunny全編にちりばめられています。まだ読んでない人は、ぜひ、一度読んでみてください。